偕老ホームの第一印象は、私がTV等の情報から得ていた、いわゆる認知症の方の施設というイメージとは全く違うものでした。

 そこには、穏やかでゆったりとした時間がながれていました。私が挨拶をすると、にこやかに微笑をかえされる入居者の方々の表情はまさに、それを象徴するものでした。

 施設長さんが言われるには多くの来訪者が私と同じような印象を話されるとのことでした。 私は、何故そのようなことが可能なのか、その秘密を知りたいと思いました。

 ホームから徒歩で2,3分の所に小学校があります。

 偕老ホームは、地域との連携の一つとして、おはようボランティアというものを続けています。朝の小学生の登校時間に合わせて、入居者の方々とスタッフが、校門前の横断歩道で、子供たちに「おはよう」と声をかけるのです。少し、恥ずかしがりやで、おはようの挨拶が出来ない子供も、車椅子に座った、入居者の方々の純粋な笑顔を前にして、小さいながらも声を出して挨拶をしていく光景は、何とも微笑ましいものでした。

 見ていると、学年が上がるにしたがって、次第に、子供たちの声も元気なっていくようです。

 また、授業の一環として、子供たちが、ホームを訪問する事があります、入居者の方々と一緒に紙相撲を楽しんだり、子供たちが入居者の方々のためにダンスを披露して、入居者の方々を喜ばせたり、子供たちが入居者の方々に質問するコーナーなどもあり、楽しい交流が続いています。

閑話休題、午前10時になると、ホームでは運動の時間になります。この日はベテランの男性スタッフが大きな、はっきりとした声で、入居者の方々がラジオ体操を上手く出来るようにリードをしていました。体操が終わると、声の発声練習、これには、食事における、嚥下をよくする効果もあるそうです。そこにいる全員がスタッフの言う通りにやれるわけではありませんが、一生懸命声を出そうとしている入居者を見つけると、すかさず「Aさん、いいですね」と声かけをする、それに、つられるようにして、他の参加者も積極的に取り組もうとする、阿吽の呼吸の様なものが、入居者の方々とスタッフの間にある様でした。

そのあとは、指を順序良く開く練習等があり、一通り済むと、お茶の時間になりました。

高齢者にとっては、水分の補給はとても大事だそうです。後で、介護日誌を、見せて頂きましたが、どんな飲み物を何CC飲んだかまで、記載されていたのを見て、そのことを大切に考えていられるのだなと感じました。

お茶休憩のあとは、お昼の準備です。高齢者グループホームと所謂普通の老人ホームとの違いは、入居者の方々をただのお客様というより、ホームと言う家族の一員として考え、自分で出来る役割があれば、それをする事によって、一緒に生きる喜びを得る。スタッフはそれを助ける、そのような関係性を大事にしているのそうです、だから、入居者の方々の能力応じて、役割を担ってもらうように、考えるのは、その日の昼食当番スタッフの一番の仕事です。

 その日の当番は施設長さんでした、みんなが、ラジオ体操をしている間に、その日のメニューの麻婆豆腐とワンタンスープに酢の物の準備に入っていました。その時には、既に誰に何をしてもらうかを決めて準備をされていた様です。刃物を使うのはちょっと難しそうな男性の入居者さんには、ニンニクの皮むき、比較的認知症の程度の低い女性の入居者さんには長ネギのみじん切りを頼んでいました。 その日のニンニクは普通にスーパーで売っているニンニクとは違って、玉ねぎの大きさ位ある大きなもので、それを、話題にしながら和気藹々と一緒に食事づくりを進めていきました。お昼のデザートを探していると、冷蔵庫の中にドラゴンフルーツが一つありました。それを、取り出すと、施設長さんは入居者の方々のところ行き、そのフルーツについて説明をしながら、その果物と利用者の記念写真を取っていました。入居者の方々の興味を引き出して、楽しい昼食にしようとする配慮を感じました。

食事時はスタッフにとって一番忙しい時間帯です。食事前の排泄介助や、食前食後の服薬の介助、通常の食事が難しい入居者さんのためには、おかゆを用意したり、嚥下がしやすいように、おかずをミキサーにかけたりするとともに、食事の介助等多くの仕事が、一度にやってくる時間帯です。配膳の順番を上手くずらしながら、入居者の方々が楽しく食事を出来るように心をつかっていました。

服薬については、誤薬がないように、利用者ごとに色を決めたケースに薬をいれ、スタッフ同士でチェックし合いながら、慎重に行っていました。

食事が終わると、歯磨きなどの、口腔ケアなどがあり、一段落すると、おやつまでは、利用者も、スタッフもちょっとリラックスする時間になります。

偕老ホームでは、午前と午後にお風呂の時間があります。全員が毎日お風呂に入るのは時間的も、スタッフの手も足りないこともあって残念ながら出来ませんが、入居者の方々の要求に出来るだけ添えるように、表を作って、調整をしていました。

午後3時から、この日は丁度、職員研修の日で職員全員が1Fに集まっていました。ビデオを見たのち話し合う形式の研修だったようでしたが、印象に残ったのは、その研修に入居者の方々も、全員同じ部屋にいて、参加していたことでした。 入居者の方々にも意見を聞いていたのは、まさに、全員が一つの家族なのだといわれることの、一つの証ではないかと、感じました。

これは、私がこの間お邪魔した時のメモをまとめたものです。次回から、初めに感じた秘密について、調べて行きたいと思います。

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